2013年3月11日月曜日

柏のミニシアターの瑞々しい息吹と「千年の愉楽」

柏に2月にオープンしたキネ旬が手がけるミニシアター「TKPシアター」。
ロビーにずらりと並ぶのは、過去の「キネマ旬報」バックナンバー。
柏駅徒歩1分という商業エリアのど真ん中。
キネマ旬報が手がけるだけあって、特徴ある作品セレクションに
知る人ぞ知る穴場のシアターとして注目を集めつつあるという。
……と、まだ生まれたてシアターの瑞々しさ溢れた劇場の1スクリーンにて
「千年の愉楽」も公開中である。
公開2日目の10日(日)、佐野史郎、高岡蒼佑が、舞台挨拶に登壇した。
老若男女がいい感じに混じり合ったお客さまたちと
上映後の余韻に浸された劇場内。
壇上に上がった2人、まずは「出演のきっかけ」を尋ねられ
それぞれが応える。
ちょうど、仕事をしばらく休もうかと思っていたタイミングだったけれど
ホン(台本)を読んだら、三好に強く共感して……と高岡。
一方の佐野は、実は民放の日曜昼間のバラエティ番組収録中に
若松監督がサプライズゲストとして登場し、その番組中に
<考えている企画があるので「千年の愉楽」を読んでおいてもらえると嬉しい。
腐れ縁だと思って出演をお願いします>という半ば強引な
若松孝二らしい公開オファーを受けたエピソードを語って場内を沸かせた。

すると、高岡が「そもそも、監督が僕の存在に気付いてくれたのは
twitterなんかで僕が騒がれたという、あの一件があったからなわけで…」と苦笑。
若松組の舞台挨拶は、いつでもどこでも、「写真撮影はOK」である。が、それは
「それをtwitterなりブログなりFacebookなりで宣伝する事」という条件付きだ。
人は、人と出会い、情報と出会い、そこから先、どんどん転がり出す。
若松孝二と高岡蒼佑の出会いは、twitterが仲介役を果たしたのだとしみじみ。
客席からは
「額縁の中の礼如がしゃべるシーンは、自分でどう思ったか」
「メイキング映像を見ると、笑顔が多い現場だったようだが、
 どんな時に笑顔が生まれたのか」
「若松監督とのエピソードは」といった質問が相次いだ。
佐野は、額縁がしゃべるシーンについて
「当然、この作品そのものが、あるファンタジーの中で描かれているもので
 自分としても考えてみたのだけれども、そもそも、礼如とオリュウは
 何世代にもわたって、路地の人間を取り上げ、そして見送って来た。
 一体全体、彼らは何歳なんだ、と考えた時、そもそも、
 彼らが生きているか死んでいるかすら、分からない事だと気付いた。
 それは、目の前に存在しているという事が全てで、
 「生きる」と「死ぬ」の境界線は実は見えていないんじゃないかと。
 それは、この作品のテーマ全体に関わっている事だけれども」と
作品の世界観について語った。
監督とのエピソードについて、高岡は
「自分は監督の人間っぽいところが好き。決めつけずに生身の人間を
 そのまま好きでいてくれる人だった。
 まだ次があるだろう、まだ一緒にいられるだろうという
 なんとなく思い込んでいたら(こんな形でいきなり別れる事になり)……
 でも今は、出会えた事に本当に感謝している」
やんちゃな三好に目を細めていた現場での若松監督。
今も、全国の劇場を飛び回って、一生懸命に
作品や自分について語っている高岡を、目を細めて見ているに違いない。
佐野は「僕が須賀利に到着するやいなや、監督が嬉しそうに
ここのオバハン達はな、色男が次々にやって来るから、どんどん化粧が濃くなってな
「一晩一緒にいられたら、死んでもいいわ〜」なんて言ってるんだよ〜!」と
ニヤニヤしながら開口一番に報告してくれた事を思い返していた。
各地の先行上映や初日挨拶にまわっていていつも思うのだが、
上映後の劇場内には、不思議な空気が満ちている。
生まれて、死んで、生まれて、死んでいく。
スクリーンの中の眼差しが、奄美民謡の調べとともに
劇場内に流れ出し溢れ出していったような、
そんな一体感に包まれている。
監督の血と肉からうまれた物語が
スクリーンから流れ出していった直後の空気に浸されると
言葉を失いそうになる。
若松孝二の最後の歌。
今、全国のスクリーンで流れています。
ぜひ、足を運んでください。
今週15日(金)は、ヒューマントラストシネマ有楽町にて
「千年の愉楽」を支えた女優たちによる
若松組初企画「女子トーク会」を行う。
20時45分の回上映後。
原田麻由、月船さらら、片山瞳、安部智凛
そして16日(土)は、再び柏のTKPシアターへ。
「千年の愉楽」 14時20分の回上映後
井浦新、大西信満
「11.25自決の日」17時の回上映後
井浦新、大西信満

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